ももだより 11号 2023.11
捕獲した猫が出産!
ももえです。9月の吉日、姉妹の地域猫を捕獲し、比叡平にできた「ねこんち」という猫のお家に預かっていただいていました。9月下旬四匹の子が生まれスクスク育っています。かわいいです。新しい育ての親が見つかるまで、「ねこんち」で生活しています。
ヘルパーができる医療的ケア
特定非営利活動法人ALSしがネットの訪問介護事業所ももは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者や家族、協力者が医療的ケアのできる事業所をめざし創りました。あまりにも過酷な闘病生活とそれを支える家族介護の限界を体験した患者・家族・遺族・協力者が、このままでは介護者も倒れると14年前の10月1日に立ち上げました。この間に20人を超えるALS患者・家族と励ましあい、時には慰めあいながらの13年間でした。他の難病患者や重度障害者も含めるとかなりの件数になります。
痰の吸引や胃・腸ろうへの注入
重症の難病患者や重度の障害者の在宅生活、なかでも医療的ケアを必要とする患者・家族には想像もできないほどの介護が必要になります。国はこのような現状に5つの医療的ケアに限り研修を受けた介護職員にもできるように法律を改正しました。
① 口腔内の痰の吸引
② 鼻腔内の痰の吸引
③ 気管カニューレ内の痰の吸引
④ 胃・腸ろうによる経管栄養
⑤ 経鼻経管栄養
しかし、現状は医療的ケアを行う事業所(登録喀痰吸引等事業者)が少なく、折角ある制度も使われているのは一部で、その多くは依然として家族が担っています。何故なのか?
登録喀痰吸引等事業者が少ない
登録喀痰等事業者になるには滋賀県に申請して認められなくてはなりません。申請には、医療的ケアを行うヘルパーが必要です。ヘルパーは滋賀県が委託した研修機関で勉強します。次に現場での実地研修を経なければなりません。テストに合格すると、認定証(1号・2号)が交付されます。ここまできて初めて利用者の痰の吸引や経管栄養の注入ができるのです。
人工呼吸器装着者の医療的ケアは別です
滋賀県は、3号研修といって、在宅で医療的ケアを必要とする特定の個人のみについては、1号2号研修とくらべ短い期間で医療的ケアの提供ができます。ただし別の利用者にはできません。人工呼吸器をつけた方の医療的ケアは3号研修で行います。
これだけの準備が必要です
訪問介護事業所はほとんどが民間の事業者です。医療的ケアをする必要性はわかっていても、ヘルパーを研修に派遣するための費用や代替えのヘルパーを雇い入れる手間(ヘルパーはなかなか得られません)は大変なことです。そこまでして医療的ケアをする事業所は少ないのです。
何時までほっておくのと言いたい
ももから訪問して痰の吸引や経管栄養の注入をしている利用者は11月1日現在6人です。
一体滋賀県や大津市で、例えば人工呼吸器をつけている方が何人いて、その内家族介護は何人、訪問介護事業所利用は何人などのデーターはありません。恐らく滋賀県や大津市は把握していないと思われます。
医療的ケアの必要な重度心身障害者は障害福祉課で、難病患者は保健所で、それ以外例えば高齢者は介護保険課?で把握されていると思います。それぞれの課が一緒になって全数がつかめないのでしょうか。
必要なデータがつかめない?
保険証があればどの医療機関でも診てもらえる日本の医療は優秀だと思います。それぞれの医療行為は診療報酬によって医療機関に支払われる仕組みになっています。こうした仕組みを利用すれば、例えば人工呼吸器装着者等はつかめないのかと素人ながらに考えてしまいます。
行政に頑張ってと言いたい
数年前から滋賀県や大津市に当法人(NPO法人ALSしがネット)は医療的ケアの充実を求めてきました。
大津市は平成5年1月26日前年に実施された実態調査に基づき「大津市医療的ケアシンポジウム」を開かれています。調査の回収率は47.6%。
滋賀県は2019年に122訪問看護ステーションに依頼して医療的ケア児者の実態調査を行い81の事業所が回答しています。これらの調査結果をみても圧倒的に登録喀痰等事業者が少ないことが分かります。
まず実態を把握してほしいそのうえで適切な措置を
それぞれの課が別々に調査をせずに、一緒になって全数を把握し、実際の介護現場に行って、現に介護している家族から、患者本人から話を聞いて、何からできるのか、一緒になって考えて施策に結び付けて欲しいのです。
一時の猶予もありません
ももから医療的ケアを提供して6年目になるAさん(20歳)のお母さんから手記を寄せていただきました。抜き書きして紹介します。
我が家の長女Kは2002年12月生まれで、現在20歳です。Kは、寒い冬の日に元気に生まれてきました。とても元気な女の子で、お兄ちゃんのお友達と遊ぶ機会も多くなり、活発で気が強くやんちゃな子に育ちました。丁度3歳と3カ月の頃、交通事故にあい、頸椎脱臼骨折や外傷性くも膜下出血などで心肺停止になり、奇跡的に一命はとり止めましたが、頸椎損傷と心肺停止の時間が長かったため低酸素虚血脳症で、重度の後遺症が残りました。事故直後は死に近づくKに、なんとか生きて欲しいと願い続けました。集中治療室も特別に面会制限を外していただき、たくさんの方が声をかけてくださいました。もうダメかと思う瞬間が何度もありましたが、大勢の人の思いと強気なKの生命力、発達した医療のおかげで、心肺停止の時間が長かったにも関わらず、生きる道を選ばせてもらえ関わっていただいたすべての人に感謝の気持ちで一杯でした。
退院までの1年3カ月の間、ちょっとした処置から大きな手術まで、あらゆる困難を乗り越えました。退院の目途が立った頃は不安もありましたが、Kを連れて帰れることがとてもうれしかったことを思い出します。
しかし、退院後は思いもよらないことが次々と押し寄せてきました。いわゆる医療的ケア児の在宅生活というのは一時も離れられないということはわかっていたものの、混乱しました。買い物、家族の用事、日常出かけなければならない場面には、吸引機やモニターなどたくさんの荷物をもって、Kも連れて出かけなければなりません。入院中は毎日面会に行っていたので、Kの医療的なケアは全てできるようになっていましたが、24時間を共に過ごすことの大変さは気づけていなかったと思います。病院に電話して、もう一度入院させてくださいとお願いしようかとおもったことも何度かありました。でも、生活の安定が先延ばしになるだけで同じことの繰り返しになると、ぐっと堪えて頑張りました。今思えば相談できるところもあったかもしれませんが、そんな知識も余裕もなく、毎日を過ごすことに必死で、どんな生活をしていたかも思い出せないくらいの日々でした。
そんな生活の中で療育園とのご縁をいただき、やまびこ園に入園しました。ここでは母子分離という体験をさせていただきました。やまびこ園での生活は母子ともに大きく成長できた貴重な時間となりました。卒園後は園で培った母子分離という経験を生かして、養護学校でも付き添いなしの通学籍を獲得できました。養護学校では、小学部、中学部、高等部とそれぞれ、その時々の成長を促してもらえるような教育をしていただきました。
Kが高校生になった頃、家族のことや、日々の生活のこと、卒業後のことを考えるようになりました。それまでは、たまに病院のレスパイトや緊急時の一時預かりくらいしか利用していなかったので、正直家庭での生活は大変でした。使えるサービスも少なく、帰宅後の生活や夏休みなどの長期休暇など、兄弟もいるのでどう過ごそうかというのが日々の課題でした。
医療的ケア児の生活は、社会的にも家庭内でもほとんどが母親ありきです。学校送迎、通院など、例えば母親が免許を持っていなかったら、家に車がなかったら、母親の体調が悪かったらとできなくなることがたくさんあります。母親は体調管理だけはしっかりしたいのですが、夜間は寝返りのできないKの体の向きを変えたり、吸引や呼吸器の回路の結露をとるなど、2,3回は起きなければなりません。長年の寝不足も慣れては来るものの、体への負担は年々感じるようになってきました。私が動けなくなったら、Kは家で生活することも難しくなります。
将来、明らかな意思表示のないKが、家族と離れ生活するということはどういうことなの…。母として子に自立させることに不安はあります。生きていて良かった、生きていてくれてよかったと思える人生をKも私も送りたいものです。
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